遺産相続の期限は意外に短い?知っておきたい4つの期限
遺産相続には様々な権利関係が発生するため、色々な手続きが必要となります。それらの手続きの中には期限が定められたものもあり、期限内に手続きを済ませないと法律の保護を受けられなかったりペナルティを課せられる場合があります。
期限内の手続きをしっかりと行えるように、遺産相続で発生する4つの期限について解説します。
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期限のない手続き
遺産相続には期限が定められていない手続きがあります。ただし、これらの手続きの中には放置していると他の手続き期限に影響する場合があります。期限が定められていなくても、できるだけ早めに手続きしましょう。
【遺産分割】遺産の分配を決める
遺言書の偽造や変造を防ぐために存在や形式を確認する「検認」作業や相続について関係者が分配を決める「遺産分割」に期限はありません。ただし、「検認」や「遺産分割」が行われていないと、原則として相続する遺産を譲り受けられません。
また、遺産の分配は時間がかかってしまうと、転居などで関係者と連絡を取るのが難しくなったり新たな相続が発生して権利関係が複雑になる場合があります。遺産分配の決定は相続の要となる手続きですので、できるだけ速やかに決めていきましょう。
【相続登記】相続した土地を登記する
相続した土地などの不動産登記にも手続きの期限は定められていません。しかし、近年は所有者不明の空き家が社会問題となり、法律が改正され2024年4月28日までには相続登記の義務化がスタートします。
義務化がスタートした後は、相続する人が所有権を取得したことを知ってから3年以内に相続登記しなければなりません。登記しなかった場合は「10万円以下の過料」を課せられますので、相続登記も早めに行った方が良いでしょう。
期限付きの相続手続き
期限付きの相続手続きには、主に4つのケースがあります。中には必要書類を集めたり申請に手間がかかることがありますので、期限内で確実に手続きしましょう。
【相続放棄】相続の権利を放棄する
相続放棄とは相続する財産に借金などが多く、相続すると不利益を被る可能性がある場合に一切の相続を放棄することです。相続放棄の中には相続する財産がマイナスの時は相続しない「限定承認」という手続きもあります。
相続放棄の期限は「自分が相続する状況になったことを知ってから3ヵ月以内」です。この期間を過ぎてしまうと、原則として相続放棄は認められません。相続放棄の必要書類には手に入れるまでに時間がかかるものもあるので、早めの対応が必要となります。
【準確定申告】亡くなった人の税金を精算する
亡くなった方の確定申告は、相続する人が代わりに「準確定申告」しなければなりません。準確定申告の期限は「相続する人が相続開始を知った日の翌日から4ヵ月以内」となります。
準確定申告が必要なのは、亡くなった方が以下のケースに該当する場合です。
・亡くなった方が事業を営んでいて確定申告していた
・亡くなった方に副収入があり確定申告しなければならなかった
・亡くなった方の年間給与が2000万円以上で確定申告しなければならなかった
・亡くなった方が確定申告すると還付金を受けられる
【相続税】相続した財産の税金を精算する
財産を相続したときは、相続税の申告や納付が必要です。相続税の期限は「自分が相続する状況になったことを知ってから10ヵ月以内」に納税しなければなりません。期間内に申告手続きをしていたとしても、納税が完了していなければ税金を滞納している状態になります。
ただし、相続税を期限内に納税できない特別な理由がある場合は、分割や土地などの「物」で納税できることもあります。納税が間に合わない可能性がある時は、早めに管轄の税務署に相談してみましょう。
相続税の計算間違いなど相続税を多く支払ってしまった場合は、税務署に申告すると過払い分を還付してもらえます。還付請求の期限は相続税の納付期限から5年間です。
【遺留分侵害額請求】最低限の遺産を請求する
不公平な遺言書や生前贈与があった場合、兄弟姉妹以外の相続人が法律で定められた最低限の遺産を請求することを「遺留分侵害学請求」と言います。「遺留分侵害請求」は財産の所有者が亡くなったことと遺言書などで不公平な相続の事実を知ってから1年以内に請求しなければなりません。
また、不公平な相続の事実を知らなくても相続が始まったときから10年経過すると、法定の遺産を請求する権利を失います。
遺産相続の期限は意外に短い
主な相続手続きは、ほとんどが1年以内に期限を迎えます。葬儀や相続の話し合いなどを考えると、この期限は思ったよりも短いため速やかに手続きを進めなければなりません。
手続きには時間がかかる
手続きで時間がかかることを想定しなければならないのは、関係者との話し合いです。遺産の分配を決める話し合いは関係者全員の合意が必要なため、相応の時間がかかります。
また、住民票や戸籍謄本などの必要書類を関係者全員分集めようとすると、遠隔地から取り寄せることもありやり取りだけでかなりの時間が費やされてしまいます。
期限内に手続きを完了しなければ法律的に大きなマイナスとなる可能性があるので、時間がかかることを想定して速やかに手続きを進めましょう。
専門家に相談すべきケースとは?
期限内に手続きすることを考えれば、まずは専門家に相談した方が良いでしょう。相続手続きは細かく法律で定められているため、期限内に申請を間違いなく行うことはかなり大変な作業です。
法律的な保護を受けられなければ、相続で大きく損することもあり得ます。期限を過ぎて後悔するよりも、専門家のアドバイスを受けながら、期限内に確実な手続きを進めることをお勧めします。
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